療育のへや

療育や心理学に関する、体験・書籍・論文の情報共有をしていきます。ADHD・うつ病体験記も。

-PRー当ブログで広告による収益が発生しています。

心理学系論文の読み方のコツ【実践編】

こんにちは!

 

先日、論文の読み方のコツをご紹介しました。

 

yotto.hatenablog.com

 

今日は、実際に1つ論文を取りあげてみます。

 

コツを実践しながら一緒に論文を読んでいきましょう!

 

 

 

読んでいく論文

 

今回は、「心理学×休職」で検索して出てきた、
メンタルヘルス不調による休職者の自己価値の随伴性』という論文を読んでみましょう。

 

「自己価値?」「随伴性?」

謎な用語ばかりですが、コツを抑えて読んでいけば大丈夫です!

 

論文リンクはこちら

 

コツの振り返り

 

必要な部分だけを広い読みするに、このような読み方をおすすめしました。

 

 

実際に、この順番で読んでみましょう。

 

 

読み進める

要旨

なんと、いきなり要旨が英語です!

 

でも大丈夫。

そんな時は、DeepL翻訳に頼みましょう。

 

 

こんな風に訳してくれました。

 

ざっと読んでみるとこんな感じです。

 

メンタルヘルス不調で休職している人のパーソナリティを調べた

CSW(Contingencies of self-worth)(自己価値の随伴性)に着目した

・休職者と、職場の価値観の差を比較した

・3種類のCSWは、休職者の方が在職者よりも高い

 

CSWなにそれ?という感じですよね。

 

要旨を読んで、わからない部分を明確にし、あとで理解することが、論文を効率よく読むためのコツです。

 

 

用語

読み方のコツと順番は違いますが、この論文では用語が先に出ているので、用語を見ていきましょう。

 

パーソナリティとしての自己価値の随伴性

→自己価値の随伴性(CSW)とは、「個人の自尊感情がどのような事象に随伴するのか」についての個人差をとらえるための概念。たとえば、「他者の評価によって自分の自尊感情が規定される」など。

 

競争CSW

→仕事上で他者との競争に勝つことで、自尊感情が維持される。

 

他者の評価CSW

→職場で周囲から評価・信頼されることで、自尊感情が維持される。

 

自律性CSW

→自分の価値観に基づいて働くことで、自尊感情が維持される。

 

 

序論の最後「本研究の目的」「仮説」

 

次に、この研究がなにを目的としているのかを見ていきましょう。

 

この論文は少し入り組んでいて、「仮説」がバラバラになっています。

 

また、用語も序論の中にちりばめられて解説されています。

 

 

読んでいくと、仮説は4つあるとわかります。

 

仮説

仮説①:休職者が振り返る休職以前の競争CSWおよび他者の評価CSWは就労者よりも高く、自律性CSWは就労者よりも低い

 

仮説➁:休職者は現在の競争CSWおよび他者評価CSWを、休職以前よりも低く感じているが、自律性CSWではそのような低下がみられない

 

仮説③:休職回数が2回以上の者は休職回数が1回の者よりも、競争CSWおよび他者の評価CSWの低下を認知する程度が小さい

 

仮説④:休職者の(休職以前の)CSWと職場の価値観知覚のずれは、就労者のそれよりも大きい

 

うーん、少し難しいですね。

かみ砕いて読んでみましょう。

 

仮説①:休職中の人が、休職前のことを振り返って考えると、仕事で他者に勝ったり、他者から評価されたりして自尊感情が維持されることが、他の就労者よりも多い。また、自分の価値観に基づいて働くことで自尊感情が維持されることは、他の就労者よりも少ない。

 

仮説➁:休職中の人は、現在の自分のことを考えると、仕事で他者に勝ったり他者から評価されたりして自尊感情が維持されることが、休職以前よりも少ない。しかし、自分の価値観に基づいて働くことで自尊感情が維持されることは、変化がない。

 

仮説③:休職を2回以上した人は、1回の人よりも、仕事で他者に勝ったり他者から評価されたりして自尊感情が維持されることが少なくなったと思わない。

 

仮説④:休職者は、現役で働いている人よりも、3つのCSWと職場の価値観知覚のずれが大きい。

 

これでだいぶわかりやすくなりました。

 

 

研究方法

 

休職中の人36名と、就労中の人133名を対象とした質問紙調査です。

 

日本語版CSW尺度を使用しています。

「自分の理念や価値観に反する仕事をしていても、自尊心には影響しない」などです。

 

また、職場の価値観知覚は、「職場の上司や同僚は、他の人よりも仕事ができる人を重視している」などです。

 

考察

 

4つの仮説について、それがあっていたかどうかを見ていきましょう。

 

仮説①:休職者が振り返る休職以前の競争CSWおよび他者の評価CSWは就労者よりも高く、自律性CSWは就労者よりも低い

3つのCSWどれもが高かった。

 

仮説➁:休職者は現在の競争CSWおよび他者評価CSWを、休職以前よりも低く感じているが、自律性CSWではそのような低下がみられない

3つのCSWどれもが、休職前のほうが高かった。

 

仮説③:休職回数が2回以上の者は休職回数が1回の者よりも、競争CSWおよび他者の評価CSWの低下を認知する程度が小さい

その通りの結果であった!

 

仮説④:休職者の(休職以前の)CSWと職場の価値観知覚のずれは、就労者のそれよりも大きい

その通りの結果であった!

 

 

まとめ

 

休職をするほどメンタルダウンしている人は、仕事で他者に勝つことで自尊感情を保ち、他者からの評価で自尊感情を保ち、自分の価値観に基づいて働くことで自尊感情を保っている傾向と書かれています。

 

また、職場の人との価値観のズレが示唆されました。

 

競争に勝ちたい・他者から良い評価を得たいという自己のあり方に働きかけることがメンタルヘルス不調の予防につながるかもしれない。

とまとめられています。

 

 

おわりに

 

論文の読み方のコツを、実践してみていきました。

 

論文を頭から読んでいくと大変ですが、コツを実践することで、簡単に読むことができます!

 

ぜひ実践してみてください!